ロゴの作り方 コルクインディーズ編

ロゴデザイン

 

 

編集者 佐渡島庸平さんが代表を務める、クリエイターエージェンシーの株式会社コルク

 

その佐渡島さんが中心となって新たに「コルクインディーズ」というレーベルを立ち上げることになりました。このレーベルロゴをNASUで制作することになったので「ロゴの作り方 コルクインディーズ編」と題して、今回は取材形式でお届けします。

 

 

 

「誇り」を感じるロゴを

 

 

──コルクインディーズのロゴを受けることになった経緯を教えてください。佐渡島さんから、依頼があったということでしょうか?

前田:今年つまり2019年のはじめから、デザイナーから漫画家に転身すると宣言しました。ただ現実的に、以前からお付き合いのあるクライアントさんの手前、アートディレクションは継続します。それは漫画にもつながるから。これは推測だけど、そういう発信をしていたのを佐渡島さんが見てくれたのかなぁ。

佐渡島さんから「インディーズのレーベルを立ち上げるので、そのすべてのアートディレクションをお願いしたい」とお話をいただきました。

ちなみにこのコルクインディーズは、僕のオンラインサロン前田デザイン室で作った雑誌『マエボン』の影響を受けているとのことでした。音楽にはメジャーとインディーズのレーベルがあるじゃないですか「マエボンがやっていたのはインディーズ的な売り方で面白い」と。それを佐渡島さんも漫画でやるとのことで、それがこのコルクインディーズだそうです。

 

 

 

──マエボンがここに繋がっているのかと思うと感慨深いですね。

前田:そう、今思えば縁を手繰り寄せている感じがします。箕輪編集室に入り箕輪さんから佐渡島さんを紹介してもらったこと、マエボンを作ったこと、佐渡島さんが講師を務めていたセミナーがきっかけで漫画家に転身すると宣言したこと。僕は以前から漫画制作に意欲を示していたこと。

佐渡島さんの本を編集した竹村俊助さんのロゴを制作したり、それからなんと言ってもコルクのロゴは僕憧れのデザイナー水野学さんのgood design companyが制作していますから。いろんな縁がうっすらと繋がってきた感じですね。

 

(佐渡島さんが講師を務めていたセミナーでの写真。)

 

 

──確かにそうですね。依頼を受けることとなり、コルク側にヒアリングをしたとのことでした。打ち合わせして感じたことや印象的だったことは、何かありますか?

 

前田:佐渡島さんに「ロゴを見た人にどういう気持ちを抱いてもらいたいですか?」という質問をしました。なんのためのロゴなのか?「感情のゴール」を設定したくて。

すると「誇り」と即答してくれました。それで「お客さんというより、漫画家さん、作家さんの気持ちを支えるロゴなんだ」と理解しました。

「とにかくかっこいいロゴ」とも言ってたかな。「テンション上げたい」というゴールが明確でそれが心地よかったです。

それからヒアリングをしていたときに感じたのは、佐渡島さんの決意です。このコルクインディーズに本当に力を注いでいるのだなと。「今もっとも新人漫画家に時間を割いている」とも言っていました。だから、このロゴ制作は僕的にも本気スイッチが入りました。コルクインディーズの漫画さんたちも知っていますから。

 

 

 

1回目「検証」コルクロゴブランドを生かすかどうか?

 

 

──提案1回目の内容についてお伺いします。提案というか、今回は「検証」報告書の提出ですね。検証の焦点となっているのは、CORKロゴを使った方がいいのか否か?ですね。

 

前田:そう。CORKのロゴを組み合わせてロゴを作った方がいいのか?それともCORKの文字だけでいいのか?まずこれを検証しました。

 

(検証にて作ったロゴのラフ案)

 

前田:この検証の結果わかったことをまとめて報告しました。

 

(検証結果の報告書より)

 

前田:その結果オススメのロゴの方向性を提案しました。

 

 

 

 

──検証結果の中でも特にカラフルさの要素は最終的に残っていますよね。多様さを感じます。

 

前田:このレーベルのカラーとしても何かのイメージに偏るよりも多種多様なほうがいいかなと。なにより1、2色だと色を決めきれる理由がない。あとはフレッシュな感じがするから。鮮度を感じるというか。それからカラフルなのは僕っぽいよね、割とそういうデザインが多いかもしれない(笑)。

 

 

──確かに前田さんらしいです。カラフルでPOPなデザイン=前田さんの印象です。

前田:ああ、確かに。意識していないけど自然とそうなることが多いようです。

実は美大の浪人時代、色彩感覚にコンプレックスがあって色彩構成の課題を死ぬほどやりました。結果克服してからは、むしろカラフルなものが、大好きになったのかもしれない。色の魅力を知ったのかもしれない。色合いもはっきりしたものが多いかな。淡い色も魅力はあるけど、その場合は1色にすることが多い気がする。

 

──ちなみに…。検証にあたり尊敬する水野学さんが制作したCORKのロゴに触れてみて、改めて感じたことはありますか?

 

 

株式会社コルクのロゴ

 

前田:やっぱりすごいなぁと思いましたよ。

CORKのロゴは元になった書体があって、それをアレンジしているようです。とはいえ、そんなに手を加えている訳ではなさそうでした。選んでいるフォントが良くて完成されたデザインなので、手を加えすぎると、微妙になっていってしまう。だから手を加えるのは、今くらいがいいさじ加減だと感じました。

料理で言えば素材を生かした料理の仕方が絶妙ですね。さすがです。

 

 

 

ロゴのブラッシュアップ

 

──検証を経て次の段階へ移るわけですが、書体の検証ですね。ものすごい検証の量ですね。たくさん出して、出力して、壁に貼って選ぶのでしょうか?

 

前田:いや、この段階ではまだ壁には貼ってないかな。出力はするけど、書体選びはモニター上で確信を持てることが多い。ディティールを詰める時には何パターンも壁に貼ることが多いね。結局、書体も最初直感で選んだものになりがちなんだけど、その選択を確実にするためにやっています。
瞬間でこれはダメ、これはいけそうというのがわかる。こういった検証ってめんどくさいんだけど、やってると次の仕事で頭の中でイメージようになってくるの。

 

 

──色の検証もされていますね。最初のラフでは緑、ピンク、青、黄色でしたが、

最終は緑、ピンクまでは同じですが、黄色、青に変わってますね。

 

前田:はい、色の並びも大体のパターン検証しました。

緑を最初に持ってきたのは明確な意味があって「コルクの芽」なんです。最終的には採用しないことになりましたが。コルクの芽はロゴモチーフとしても途中まで提案していました。

それから CO(若干淡い)RK(若干濃い)の明度のバランスも調整しています。グレーにしたら、前の2文字淡くて、後ろの2文字が濃くなるから。

 

 

 

「芽」か「ペン」か。コルクインディーズを示すモチーフ選び。

 

──ブラッシュアップの結果CORKのCから芽が出ている案を提案されていますね。この方向性で進むのかと思いきや最終的にペンモチーフの案になりました。ここに到るまでのお話を聞かせてください。

 

(ロゴブラッシュアップ提案書より。CORKのCから芽が出ている。)

 

 

前田:コルクさんがやろうとしてること自体が、作家やコンテンツの育成だし、コルクの原料である「コルクガシ」という植物の芽は、この社名だから使えるモチーフです。だから「これしかない」と思っていました。

 

でもコルクさんから指摘があって、違う案を模索することになりました。「芽」というモチーフが示す強さゆえとのことでした。すでにコルクインディーズにいる漫画家さんの中にも「芽っていう年じゃないけどな…」という声があったようです。

コルクインディーズは、新人育成の側面が強いけれど、すでに漫画家としての地位を確立している方が、ここから出すということも想定しているとのことでした。ミュージシャンのスガシカオさんを例に出して説明してくれましたね。僕はよく知らないんだけど、スガシカオさんは売れてからもインディーズレーベルから作品を出している時期があったようです。

 

「芽」といっても漫画家そのものを指すだけではなく、コンテンツの「芽」でもあるし、ファンを「芽」とも言えるわけで。僕は結構柔軟な方ですが、めずらしく「芽」にはこだわりがありましたね。

 

ただ、ここで最初の佐渡島さんの言葉に立ち返ると「芽」は違うんですよ。未熟さは漫画家さん、作家さんの「誇り」にはならないでしょうから。ちなみに一番最初、スケッチ段階で角の取れていないコルクの案も考えていました。ただこれも角が取れていない、熟していない、未熟さを意味するから、誇りにはならないなと思って提案はしませんでした。

 

(初期のスケッチ案)

 

 

──確かにそうですね。では、芽からペンに到るにはどういう経緯があったのでしょうか。

前田:芽以外の案をとのことだったので、爆速で代案を考えました。

 

前田:コルクインディーズとは何か?についてコルクさんと議論を重ねるきっかけになりました。

コルクインディーズの本質は、最初にもお話しましたがまさしく『マエボン』なんです。。

つまりファンとの向き合い方が今まで違うってこと。大手出版社なら不特定多数に向けての発信だけど、少数部数にすることでファンの一人一人の顔が見える。だからある程度売れてる人でも、インディーズでコアなファンを築いていく場所なんですよ。

代案で出したものは、その部分を掘り下げました。

 

 

──ペンが選ばれた理由はなんでしょうか?漫画家さんだからペンに賭けるということですか?

前田:そう、ペンにかける。一球入魂ならぬ、一筆入魂。ひとりひとりのファンと向き合う意味もあるから「ファン1人に向けて一筆入魂する」が正しいかな。

 

 

──ペンの案も2つありますよね。

この万年筆の「i」から、

最終の「i」に変わった経緯を聞きたいです。

 

前田: この2つで佐渡島さんが迷っているようでした。僕に意見を求められたので、「一点集中だとこちらですね。」と伝えて決まりました。

 

 

──もう1つのは、よりペンの意味合いが強そうですもんね。

前田:そう、万年筆のペン案に佐渡島さんがあんまり反応してない気がして。それを汲み取ったのと「一点集中」シンプルでかっこいいなって。要素を抽象化しているから外向きに感じられた。

 

──なるほど。こうやってクライアントと議論を重ねることによって、サービスの本質がクリアになるってみていてすごく参考になりました。育成の要素もつよいけれど、それ以上にファンとの向き合い方、一人一人の顔が見える売り方を大事にしているってことですね。

前田:そう、ロゴ作りって、そのもののあり方を構築することでもあるよね。

でも、今思ったんだけど、佐渡島さんはこの「一点集中」選んだ理由は意味合いより、「見た目」かも。僕がこの時かなり内向きだったから、外向き、社会に落ちた時の見え方で選んだ気がする。冷静に見て、一番美しい造形のロゴを選んでもらえました。

 

 

「芽」の案を作ってみたから見えてきたことで、このプロセスが大事なんだよね。ちょっと盲目的になってしまっていたかも。僕はそこから洗練させていくんだろうけど遠回りしてたと思う。だから、やっぱり佐渡島さん天才編集者だなって。クリエイティブの舵取りがうまいんです。

 

 

マクロとミクロの世界を往復

 

──モチーフとなるものが芽からペンに決まったことで、最終段階へ加速することになります。FIX作業、毎回ですがみているだけでも圧巻です。

前田:そう。ここからはミクロの世界と、マクロの世界を行き来する感じかな。

 

──FIXに向けての段階も前田デザイン室内で投稿されていますよね。
この投稿について伺いたいです。結果は後者のフォントをアレンジされていますか?

 

前田:そう。「CORK」「INDIES」が一目で伝わるように。コルクのロゴを使わないことにしたし、カラーにしたことによって損なわれた視認性の担保かも。「かも」というのは、この時は直感でやってて今聞かれたからそうなのかなって気がした。

 

 

──完成するまでの工程も見ることができて参考になりました。モックアップに当てはめたり、途中で集中が切れたから納品書の準備をしたり。

 

前田:納品データのフォルダ作るだけでも、納品する時の未来を創造するじゃない?そうすると、一気に手が進む。手が進まない時はこれをやるといいよ。モックアップは、社会に投下したらどんな見え方がするか、それがデザインを決めてくれるから、こちらもおすすめ。 あと、ずっとミクロの世界で作ってたらよくわかんなくなってくる。あれ、このデザインっていいのかな?ってだから、一旦離れる。壁に貼って2〜3日おいたりもするよ。

 

 

──納品データとかモックアップに当てはめてみて「あ、ここ変えた方がいいかも?」となって変える時ってありますか?

前田:ありますよ。もうちょっと文字を細くしようとか、文字間あけたりとか、パッと見どこに目が行くか?視認性、グッズになった時にかっこいいか?という視点で。いつもMAXで検証やってるけど、今回はその中でもMAXでやりました。だって水野さんも見るかもしれないしね(笑)。

 

──絶対見るでしょう!!気合いがはいりますよね。

前田:やりすぎて最後、これで良いのかわかんなくなった。逆にそれが心配だったけど、今見ても最終ロゴ、良い感じになっていてよかった。NASU本にも書いてるけど、揺るぎない硬いデザインになったという自信がある。このロゴがどんな風に使われていくのか楽しみです。

 

 

 

というわけで、コルクインディーズのロゴの完成形はこちら。

 

 

 

 

 

ロゴの作り方、コルクインディーズ編を取材形式でお届けしました。

そして本日2019年7月16日、ピースオブケイク社にてコルクインディーズのお披露目会が開催されました。

 

 

 

実際に使われたロゴの様子を含むお披露目会のレポートを明日掲載予定です。

 

 

 

 

 

取材・構成・編集・撮影:浜田綾(コトバノ)

前田デザイン室は現在「満席」です。

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