デザインの本を出版します。その名も『勝てるデザイン』です。

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「一流のデザイナーになりたい」

 

いつか良い仕事をして、デザイン雑誌に紹介されて、賞をバンバン獲って、有名になって、30前半で独立。天井むき出し、真っ白なオフィスで、気の合うアシスタント数人とワイワイしながら最高のデザインをする……20代の前半、僕はそんな未来を思い描いていた。恥ずかしいくらいベタだけど本気だったんです。

でも悲しいことに、「自分は凡人だ」ってことを誰よりもわかっていたのは、他の誰でもなく、僕だった。

だから、何かに取り憑かれたように「一流」にこだわっていた。もがいて、悩んで、苦しんだ。プロのデザイナーになって19年の時が経っていた。まだまだデザイナーとして「誰やねん」状態だけど、積み上げた活動と実績が、少しずつ注目してもらえるようになった。伊勢丹とポケモンのコラボ企画のデザインは話題となりメディアにも取り上げられた。

©2017 Pokemon. ©1995-2017 Nintendo/Creatures Inc./GAME FREAK inc.

 

トータルブランディングを手がけるレディオブック株式会社がスクーデリア・フェラーリとパートナーシップ契約を結ぶことになったきっかけも、僕のデザインだった。

 

一流とは何なのか?一流になれたのか?僕は死ぬまでそれを求め続けるんだろう。しかし今、ひとつだけ言えることがある。

僕もようやく「勝てるデザイン」ができるようになってきたのだ、と。

 

 

 

小学校に入ってすぐの休み時間。『キン肉マン』の絵を描くことが、クラス中で流行っていた。僕も家でよく描いてたので自由帳に描いてみた。

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その時だった。

 

「すっげぇええ! めっちゃうまいなぁ。」

 

ガキ大将。その4文字がこれほどまでに似合うやつもいない、そんな体格と顔の男の子が、きらきらした笑顔を僕に向けていた。

 

「え? なになに?」

 

「うわ、ほんまやすげぇ!」

 

「なぁ、ロビンマスクも描ける!?」

 

噂は噂を呼び、次の休み時間、他のクラスからも子供が集まり、僕の机の周りには人だかりができた。その反響がインパクトがあったのか、すっかり「絵が上手なたかしくん」で定着した。4年たってもそのイメージは健在で、学級旗の絵を描く人を決めるときに推薦投票になったがダントツで一番に選ばれた。

 

だけど僕は、小・中・高校を通して美術で表彰されたことは一度もない。小5、小6になると美術の授業からコンクールに出品された人が朝の全校朝礼で表彰される。そのころから「絵が上手なたかしくん」は薄れてきて「前田って昔は絵がうまかったよね」に変わっていっていった。もどかしい、悔しい、妬ましい……まぁ当然そういう感情は湧いたけれど、でも僕は、それからもずっと絵が好きだった。「なぁ、たかしくん、またキン肉マン描いてよ!」「やっぱすげー!」絵は唯一、他人より優っていた部分。褒められることで劣等感を打ち消すことができた。

 

大阪芸術大学の受験も失敗して、一浪した。デッサンは平均より少しできるレベルだったけど、色彩感覚がまったくなくて、かなり苦労した。ようやく美大に入ったけれど、どう考えても落ちこぼれだった。成績だけじゃなく、「服がダサい」と陰で言われていたりした。刺繍が入ったジーンズを履いてた時は女子からモロに「前田くん、ジーパンに刺繍入ってるやん!」と笑われた。美大生としてもっとも言われたくない「センスがない奴」と思われていただろう。

(大学一年の時の前田)

だから僕は言い続けた。想い続けた。「一流のデザイナーになる」って。僕は人より覚えるのが遅い。だけど、人生は長い。ずっとやっていたら一流にたどり着けると根拠のない自信があった。凡人という劣等感から抜け出したいと思っていたのかな。物心ついた時から、長い人生をかけてひとつのことに打ち込みたいと思っていた。

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美大受験の時は同じ色彩課題を何度も繰り返し、色彩感覚をつけた。毎日、苦手だった楕円形を描く練習をした。頭の理解では無理だと判断して、カラダに染み付けようとした。すると、学内コンクールで2位をとることができた。やっぱりコツコツやっていたら凡人からちょっと抜け出せると確信した。大学では教授室の前に張り込んで、何度も何度も質問した。僕は話の理解が遅かったから。ダサいファッションセンスは今も良いとは言えないけど、くやしくてファッション誌をぜんぶ目を通していたから、何がダサいかくらいはわかった。

 

そして任天堂に入社。もちろん苦労した。研修の時に早くも挫折を味わった。事務研修で当てられても良い回答できなかったり、計算が遅かったり、ビジネス文書の間違いなんて見つけられない。工場研修でのチェックや制作も雑で遅い。みんなスムーズで優秀。劣等感しかなかった。宣伝部に配属されてすぐに、デザインなら少しは自信があるという大学でつけたひとつまみの自信がぜんぶ吹っ飛んだ。仕事としてのデザインがこんなに思い通りにいかないとは……と愕然とした。しゃべりもうまくないから上司からの指摘にただ悔しくて涙を浮かべたことがある。ただ言われるがままにデザインするので精一杯だった。

 

だから、まずは制作スピードを上げた。物量でカバーした。そして、どんな仕事が来ても対応できる、デザインの作り方の方程式を作ろうと思った。20代はこれに打ち込んだ。デザイン書は書店の棚の端から端までを読み、広告塾に通い、セミナーにもなるべく参加した。スタークリエイター、広告業界への憧れがあり、デザインを商品にすることへの憧れ。デザイン会社で修行しにいきたくて転職活動をしたこともあった。ちょっと痛い夢見がちなデザイナーだったかもしれない。

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2016年に任天堂を離職し、フリーランスになった。デザイナーの場合、独立しても前の職場の仕事やコネ頼りになることが多い。僕は任天堂から(直接ではない)仕事を少し請けていた件があったが、ほとんどのクライアントは独立してから出会った。コネもツテも少ないし、年齢も40近い。なりふり構わず早急に自分を知ってもらう必要があったので、僕はブログやSNSでの発信に力を入れることにした。

 

発信し続けていると、若いデザイナーやデザインに関心のある経営者から反響があった。僕の長年の「もがき経験」が迷えるデザイナーにとって価値があることがやっとわかってきた。才能ある人やカンが良くて器用な人がうらやましい。そういう人が書いているデザイン本はこの世にたくさんある。しかし、もがいてきた僕だから書けることがある。これまでのもがき経験が誰でもたどり着ける「勝てるデザイン」への道と断言する。

 

独立してからの僕のあり方に大きな影響を与えたのは、幻冬舎の箕輪厚介氏が主宰するオンラインコミュニティ「箕輪編集室」に入ったことだ。最初は仕事が安定してきたし、新しいことへのチャレンジでちょっとだけ覗こうと入ったけど、いつのまにか仕事よりのめり込んでいた。編集者 箕輪厚介から依頼されるデザインの指示の明快さ、それに応えることの楽しさ、そのあとの反響の大きさは、メジャーリーグのバッターボックスに立たせてもらっているような気持ちになり、仕事じゃないのにワクワクしながらデザインしていた。箕輪さんからは「箕輪編集室の成功の9割はデザインにある」と言ってもらえた。

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(箕輪編集室でデザインした一部)

それから、箕輪編集室からは、みんなでものづくりすることの楽しさを教えてもらった。だから僕もデザインに特化したコミュニティをやってみたくなり、箕輪さんに許可を得て「前田デザイン室」というコミュニティを立ち上げた。

 

前田デザイン室では、約200人のクリエイターたちが所属し、仕事とは真逆のデザインをしている。利益は求めない。自分たちの楽しさ優先だ。真っ白な画用紙に無心で描いていた子供のころのように純粋にクリエイティブを楽しんでいる。雑誌の制作未経験者が9割で作った雑誌が大型書店のヒット本と一緒に陳列されたり、『宇宙兄弟』の編集者である佐渡島庸平さんが新人漫画家レーベルを作るきっかけになったり、『モザイクパンツ』はネットメディア「ねとらぼ」をきっかけにバズり、初めての拙著『NASU本』は『所さんの世田谷ベース』というTV番組で紹介してくれたり……。作ってる自分たちが純粋に楽しんで作っていると次々と面白いことが起こる。

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BSフジ『所さんの世田谷ベース』より

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前田デザイン室のみんなと作ったプロダクト

 

「勝てるデザイン」は、クライアントを笑顔にする。明るい未来をイメージできたり、社員のモチベーションをあげ、アイデアが自然と広がるワクワク感を提供できる。そしてデザインを受け取ったたくさんの人の心を動かす旗印になる。そしてなにより、自分が「おもろ!たのし!いいな!」と思える。究極の自己満足は究極の他者満足だ。

それが結果として、売り上げ、集客、採用、受注など、数字につながっていく。「心」なんて曖昧な!  という人もいるでしょう。しかし、良いデザインは誰が見ても良いものだ。例えば、Apple製品のデザインってだいたいの人が良いっていうじゃないですか。フェラーリは誰が観てもかっこいいっていうでしょう。としまえんのエイプリルフールの広告は誰もが面白いと感じるだろう。

 

それぐらいハッキリしたものだ。プレゼンで勝てない、デザインで結果が変わらない、というのはデザインで心が動いていないからじゃないか。

 

その勝率を上げるのがプロのデザイナーです。色彩感覚、センス、タイポグラフィ、レイアウト、企画、ディレクション、仕事の進め方、プレゼン、営業、値付け、セルフブランディング、コミュニティ……。本書は「勝てるデザイン」が身につく本を目指します。

 

 

昨今、新型コロナウイルス感染症の拡大が深刻です。こんな時期に本を作っている。このnoteを書いていることすら、「そんなことしてる場合じゃないのでは?」という葛藤がありました。でも、デザインで「人の心を動かす」という効果は、経済的に社会的にも人と人が生きていく上でとても価値があることだと考えています。

僕は小さなころから、美術の賞は獲れないけどクラスの仲間に絵を褒められ、喜ばれる存在だった。大人になってもそうなのかもしれない。もがき続けた結果、デザインはできるようになったし、いくつか賞も獲った。だけど僕が夢見ていた広告業界のデザイナーたちのようなあらゆる賞を獲り、雑誌に掲載され有名人に……とはならなかった。代わりに僕が得たものは200人を超えるクリエイターの仲間たち。そう、僕がキン肉マンを描いていた小学生のころからやってきたことはどうやらずっと同じで、心を動かす「勝てるデザイン」だったのかもしれない。

 

昨年まで、大学と専門学校でデザインを教えていました。今もSchooやみの校で教えています。デザインの教育について考えることが多くなりました。書店の本棚を見ると、デザインの本は超一流の人の考え方の本か、初心者向けの本の両極端。僕みたいな人間がもがいてきた経験は様々なシーンに役立つはずです。もっと良いデザインをしたいというデザイナーのみなさんに少しでも「力」になれればとてもうれしいです。僕と一緒にもがき苦しみましょう。そして、みんなで「勝てるデザイン」をしましょう。

 

2020年秋にデザインの本を出版します。その名も『勝てるデザイン』です。

 

株式会社NASU 代表取締役 前田高志

 

 

 

 ↓書籍についての詳細です。最後にお知らせもあります!
■ 書籍について(2020年4月18日現在の内容です)

 

タイトル

『勝てるデザイン』

 

著者

前田高志 株式会社NASU代表取締役。クリエイティブディレクター/アートディレクター/グラフィックデザイナー /コミュニティデザイナー。2001年 任天堂(株)入社。広告デザインや会社案内などに携わる。2016年父の認知症をきっかけに介護離職。屋号は社名のNASUは“為せば成る”が由来。デザインで成(為)す。2020年から、株式会社RADIOBOOKのクリエイティブディレクターに就任。主宰するオンラインコミュニティ「前田デザイン室」でのコミュニティ運営のノウハウを生かし、コミュニティ事業をスタート。CAMPFIRE株式会社と協業開始。青山ブックセンターのコミュニティを立ち上げ、運営をスタート。

 

目次案

第1章 【駆け出し向き】勝てるデザイン力を鍛える第1フェーズ
1-1・パラレルワールドを想像できる素直さこそ、デザイン上達の鍵
1-2・人の脳からアイデアのエッセンスを吸収し、自分の方程式を作れ
1-3・スピードがあるとトライ&エラーが増える
1-4・つまらない仕事は存在しない
1-5・デッサンがクリエイターを作る
1-6・デザインは文字が9割
1-7・デザインはレイアウトではない
1-8・自分が嫌いなデザイナーが作ったデザインとしてみろ
1-9・良い印刷会社と付き合え
1-10・クオリティポリスからの脱出がワンランクアップへの道
1-11・色彩感覚はセンスより努力
1-12・デザインの検証の仕方
1-13・A4チラシがデザインの教科書の1ページ目だ

第2章 【3年目以上向き】勝てるデザイン力を伸ばす第2フェーズ
2-1 ・デザイン提案はクライアントによってカスタマイズする
2-2 ・ヒアリング力を鍛える
2-3 ・作りたいデザインは勝手に提案しろ
2-4 ・良いデザインを作る5つの方法
2-5 ・チームの仕事はアートディレクションと同じ
2-6 ・課題の裏側を読め。
2-7 ・アイデアは幸せになる人を増やせ。
2-8 ・作る前にプレゼンをやれ
2-9 ・それは、デザイン案ではない
2-10・コンセプトとは印ろうのことである。
2-11・脱・アホなデザイン。思考は浅い深いではなく、
2-12 ・流れているか流れていないか。仮説を立てて可能性を知れ
2-13・寺か?昼休みか?デザインのタイプを見極めろ。
2-14・小さな失敗体験で、自分をあきらめろ。
2-15・コンテンツを魅力的に見せる方法

第3章 勝てるデザインを最大化する。
3-1・ロゴの作り方を解剖公開。デザインにノウハウはない。
3-2・成長の鍵は鬼フィードバック
3-3・誰でもデザインを武器にできる 、メジャー感
3-4・今、求められる“興味を奪う”デザイナー
3-5・居場所もデザインする
3-6・Theデザイナーじゃなくてもいい
3-7・仕事とは真逆を行くデザイン
3-8・0か3桁かでデザインする

 

発売

2020年10月発売予定

追伸:
今、NASU社員でもある浜田綾さんから取材され、原稿は増えていっています。そのあと、幻冬舎・片野さんが編集されるから研ぎ澄まされていきます。帯の推薦文は箕輪厚介さん、佐渡島庸平さん、装丁は戸倉さんです。この本、売れる予感しかないです。

また、僕はこれからschooや箕輪編集室の「みの校」で講師をすることになりました。そこでも「勝てるデザイン」の話をします。受講してくださる方は、どんどん質問してください。

schooの受講はこちら

 

みの校の受講はこちら


 

最後に

「10月に出版される本をなぜ今noteに!?」のわけは「noteのサークル」を作ろうと思ったからです。僕はデザイナーですが、コミュニティの人でもあります。みんなとラリーを交わしならものづくりをすることが人生の喜びなんです。今回もみんなとワイワイ言いながら、良い本を作りたいと考えnoteでコミュニティを作ってみようと思いました。すでに前田デザイン室というオンラインコミュニティでも本の内容は公開しています。

だから、前田デザイン室に入ってる人は重複するので入らなくて大丈夫です!noteサークルの前田高志勝てるデザイン』編集部はただいま申請中で近々公開予定です。(月額300円で入れます)本気でデザインと向き合います。参加してくれた方は編集部メンバーとして本のクレジットにお名前掲載させていただきます。

(追記)『勝てるデザイン(仮)』編集部が公開されました!2日で20名の方に入っていただいています。貴重なコメントお待ちしています。

参加はこちら

アートボード 4 のコピー

 

最後まで読んでいただきありがとうございました!

 

 

 

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